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映画メモ

映画やゲームや小説の感想など 2016年6月~

Finding Dory(2016) ファインディング・ドリー

ざっと感想(ネタバレ込み)

  • 前提知識なしに映画を観てまず思ったのは、この作品は自閉症への讃歌だということ。
    googleで"Finding Dory, autism(=自閉症)"と検索したところ大量のブログ等がヒットしたので、皆さん思うことは同じなんだなと。中には、自閉症の息子さんを家族に持つお父さんの感想などもあり、彼によるとドリーの姿を息子に重ね合わあわせて映画を観たとのこと。(もちろん、他のブログにはステレオタイプな自閉症理解に基づく描写はけしからんというお叱りの意見などもあった。)
  • 映画の中ではautismという言葉は一切出てこないし、ドリー本人が自己紹介で言う通り彼女が実際にかかっているのは短期記憶喪失(short term memory loss)だけど、ドリーの言動を見ていると、自閉症を思わせる描写が多い。
    彼女は短期記憶喪失のため相手の言ったことをすぐ忘れるので、結果として相手の言うことをあまり聞いていないかのような言動を取ったり、ドリー本人にはまったく悪気はないのだが、結果として周囲を困らせるような言動を取ったりする。自分の身にふりかかる害に対しても無頓着なので、無防備で脆弱な印象を与える。ニモも父マーリンもそんなドリーの個性についてはよく理解しているので、いつも温かく見守りフォローしている。
  • いうまでもなく、自閉症的なドリーの個性と対照的に描かれているのが、いつもあれこれと強迫的に身の回りの心配ばかりしている神経症的なマーリン。
  • この映画で最も感動的なシーンの一つは、ああなったらどうしよう、こうなったらどうしようと心配ばかりして行動に踏み切れない神経症的なマーリンが、息子のニモと一緒にドリーを探すうちに、窮地に陥り出口なしの状況下に置かれた時、息子のニモが父にアドバイスをかける場面。
    "What would Dory do?" (こんな時ドリーならどうする?)
    この助言が神経症の呪縛からマーリンを解き放ち、とりあえずやってみる・行動してみるという思い切りにつながり、結果としてマーリンは状況を打開する。
    この映画が自閉症讃歌だと思えるのは、こういった、ドリーの個性をポジティブに解釈して、自閉症から良い所を学ぶ、もっと極端に言えば、自閉症になってみるというような選択肢を提示しているところ。僕達人間の社会においても、誰もが神経症的な困難を抱えている中、社会に対する距離の取り方など、自閉症の人が持つ素敵な個性から学ぶことは多いと常日頃感じていたので、このシーンを見て共感した。
  • 今作もまた、前作に負けないくらい、主人公ドリーをアシストする脇役たちが本当に魅力的だった。
  • 7本足のタコのハンク(Hank):チート級と呼べるほどのキャラ性能を持つタコ。物語終盤では車まで運転してしまうあたりはさすがに笑ったけど、長時間陸に滞在しても平気な上に、擬態能力(周囲の風景に溶け込み人間をあざむく)、緊急時のタコ墨発射による撹乱、吸盤を利用して天井・壁などあらゆるところを縦横無尽に移動する機動力の高さなどもろもろ備えた上に、何よりドリーに対して非常に優しい。
    口調や態度はぶっきらぼうで本当は人間嫌い(タコ嫌い?)なのだが、ドリーが身に付けているタグが欲しくて仕方ないので、常にドリーの身を案じていておせっかいと呼べるまでの配慮をする。
    そして彼もまた非常に神経症的な人物として描かれていて、彼がドリーのタグを欲しがる動機というのが、タグを身に付けているとクリーヴランドの水族館に送られて海と永遠におさらばできるから。
    彼にとって、海は過去の不快な記憶・思い出(extremely unpleasant memoriesと彼は表現していた)に満ちた、二度と戻りたくない場所なので、水族館に送致されて水槽の中で一人で静かに余生を送りたいのだという。
    過去に彼に何があったのかは語られないが、海という、タコにとっての社会の軋轢の中で苦しんだ結果、現実逃避を図ろうとしているのが彼。そんな彼もまたドリーのポジティブな個性に勇気づけられ、最後はドリーと共に海に帰る。
  • 近視のジンベイザメのデスティニー(Destiny)と、反響定位エコロケーション)のやり方を忘れたシロイルカのベイリー(Bailey):
    この愛すべき二頭のどたばたコンビも最高だった。物語終盤、ふたりで水槽を脱出して海に向かってダイブする場面で交わされた会話が良かった。どこかで聞いたことのあるような有名っぽい台詞なので多分元ネタはあるんだろうけど。
    "There is no walls in  the ocean! It's your destiny, Destiny!" (海には壁なんてないぞ!これは君の運命だ、デスティニー!)